英語はやっぱり「習うより慣れよ」

近所のお母さんに頼まれて、子どものための英語教室をスタートしてから6年が経とうとしています。

最初の何年かはコースブックを使って「教える」スタイルをとっていました。あることがきっかけで「多読で英語」という考え方に触れ、2012年の終わり頃から多読とBBカードを軸にした新しいカリキュラムをスタートしました。

やり方を変えてから、教室に来ている子どもたちの様子に少しずつ変化が現れているような気がします。以前と比べて…

  • 英語を楽しんでいる
  • 英語でお話を読んだり聞いたりすることに抵抗がなくなっている
  • みんなの興味や得意なことが生かされている
  • 英語が好きでもっと続けたいと思ってくれている

これは子どもたちの様子の変化だけではなくて、私の中で起こっている変化でもあります。レッスンの準備をするのが楽しくなりました。よりよいレッスンのためにもっと本を読んだり、同士との交流の場に足を運ぶようになったり、そんな機会も増えました。周りの人たちと共有したかった思いが次から次へと溢れてくるようになりました。こうしてブログをスタートしたのも、英語や教育に関する自分の思いを伝えたいからなんです。

そして、何よりも私の中での大きな大きな変化は、英語を「教えなくなった」ことだと思います。

これまでのレッスンでは、中学生から「不定詞」がわからないと聞かれれば、一生懸命説明しようとがんばりました。でも教えれば教えるほど、生徒の頭の中は混乱し、私も文法を教えることに自信がなくなっていきました。

そんなとき、BBカードを考案した難波悦子さんの本「続・カードで遊んで英語大好き!」を読みました。冒頭には難波先生の英語教室でBBカードで遊んで育った中2の男の子のエピソードが書いてありました。学校の英語授業で、文法に関する教師からの質問に、

「Kumi come to school by bicycle. というのはなんとなくおかしい。Kumi comes to school by bicycle. の方が正しいと思います。」

と答えたそうです。なぜcomesの方が正しいのかときかれて、なんとなくとだけで、きちんと説明できなかった彼に、教師はこう言ったそうです。

「あてずっぽうで答えちゃ駄目だよ。なんとなく正しいと思うからじゃ答えになっとらんだろが。3人称、単数、現在だろ。一年の時にやってるぞ。英語教室に行ってるんだろう。こんなことも教えてくれないのか。やめちまえ、そんな英語教室。」(p.11)

難波先生はご自身の教室ではあえて文法の説明などせずに、BBカードで楽しく遊び続けることを通して、子どもたち自身が英語のシステムに気づいていくことを大切にされました。文法の説明ができなくても、その中2の男の子は普通に英検3級に受かったというストーリーなのですが、難波先生の言葉でこう続きます。

大体言葉を学ぶというのは、言葉そのものを習慣として学ぶ、つまり身に付けるということであって、文法規則などを知識として学ぶことではありません。もし彼に最初から3人称、単数、現在にはsをつけるというように文法知識を教えていたとしたらどうでしょう。間違いなく英検3級など受かりはしなかったと思います。(p.11)

最近読んだTHE READ ALOUD HANDBOOKという本の中にこんな文を見つけました。(ちなみに日本語部分は私の訳ですが、大意が伝わればと思います。)

Grammar is more caught than taught, and the way you catch it is the same way you catch the flu: You’re exposed to it.

文法は教えられるというより、受け取るものなのです。どうやって受け取る/もらうかというと、インフルエンザをもらってくるのと同じ:触れていればもらってしまうのです。(p.40)

なるほどね〜。みなさん、英語にもっともっと触れましょう。英語に触れて、文法をもらっちゃいましょう。文法の説明は苦手なんだけど、でもなんとなくわかる〜、というプロセスを楽しみましょう。

文法は大切です。でも文法を「完全に理解しよう、理解させよう」と、生徒も教師もその罠にはまってしまったら、使える英語からはどんどん遠ざかってしまう、英語嫌いがどんどん生まれてしまう。なので、今の私は文法の解説をする時間があったら、すてきな本を一冊でも多く読み聞かせしようと思います。例えばこんな本はいかがでしょう。

英語を使いたいのであれば、「習うより慣れよ」だと思います。

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